人間交差点 第004話 『ひび割れた土』
主人公:太地(陶芸職人)
絹江(陶芸職人)
ーあらすじー
陶芸の産地である、とある山村の貧しい家に生まれ育った太地は、県の工芸コンクール(作中では詳らかに書かれていないが、おそらくそれに准ずるもの)で賞を取る。
その作品と太地の純粋さに惹かれた地元の陶芸家が、弟子にしたいと申し出、太地は陶芸家の下で修行をすることになる。
陶芸家には、太地と二つ違いの、絹江という娘がいた。
太地と絹江は、いつからか意識し合う仲になっていた。
太地が青年になる頃、恩師である陶芸家が急死した。
娘の絹江と弟子の太地は、二人で陶芸を守って行くことを決意する。
それから数年後、太地の知らぬところで、絹江は自分たちの陶器を展示会に応募していた。
見事合格し、出展されることを太地に報告する絹江であったが、その時、太地の脳裏には、ある記憶が甦る。
感想
-鬼面山には鬼がいた……。男と女の鬼がいた。-
という始まりのフレーズに尽きます。
歌的リズムと対句で、がっちり掴まれる。
が、読後には、”男と女の”鬼、という部分がどうにも引っ掛かりました。
男と女の鬼、ときて、そのコマ絵と併せて考えると、どうしたって愛欲に塗れた男女のストーリーを想像してしまうわけです。
そういう心持ちで読み進めたので、若干拍子抜けの感があったのは否めません。
(別にエロい話じゃなくて残念とかそういう意味ではなく)
しかしそれにしても、人間交差点ではよくあるコマなのですが、刑務所や拘置所の看守が、囚人を名前(しかも姓でなく名のほう)で呼ぶことは、この昭和中期頃には当たり前にあることだったのだろうか。
それとも、そうまでして姓を書きたくないという矢島先生のお考えがあったのだろうか。