人間交差点 第001話 『ガラスの靴ははかない』
ー 前書き ー
みなさんは、『人間交差点 (ヒューマンスクランブル)』という漫画(劇画)を御存知でしょうか?
この漫画は、少しカビ臭いような、それでいて日本が元気だった頃の背景と、そこで生まれる数々のヒューマンドラマを描いたものです。
日本が元気だった頃、と書きましたが、元気だったからこそ、元気でない人との対比は如実に表れています。
現在は格差社会だなんだと言われていますが、個人的には以前よりよっぽど平等だと思います。
有史以来、昭和中期頃までは、本当に封建的な社会でした。
昔は、格差があっても格差だと感じられない程、当たり前にそういう世の中だったのです。
それを漸く現在に至って「格差」だと騒げるようになったのではないかと。
『人間交差点』には、現在では或る種ご法度とされている職業蔑視・男尊女卑思想などが少なからず含まれています。
それらが苦手な方は、少しだけご注意ください。
しかし、読み終えた後、嫌悪感よりも温かい気持ちを抱くことのほうが多いのではないでしょうか。
それでは、第一話『ガラスの靴ははかない』からご紹介して行きます。
主人公:松沢良子(女囚)
ーあらすじー
松沢良子は、スナックで働いていた際に、常連客の木村という男と恋仲になり、同棲するに至った。
男は、同棲し始めて間もなく、勤めていた工場を辞めてしまった。
以後、男は定職に就くこともなく、良子の稼ぎのみで生活することとなった。
男は徐々に荒っぽくなって行き、預金通帳は奪われ、暴力すら振るわれる毎日に良子は耐え続けた。
思い起こせば、中学時代のある日を皮切りに、男たちの言いなりになって生きてきた。
でも、この人だけは違う。自分から好きになった人なんだ。
自分にそう言い聞かせ、耐え忍んできた
だが、それが爆発した。
男をメッタ刺しにして殺してしまい、刑務所に収監される良子。
だが、すでに良子の中には新しい命が芽生えていたのだった。
あれほど愛した男の間に出来た、待ち望んだ子供。
しかし、今となってはもう、憎しみの対象でしかない。
良子は、”殺すために産む” 決意をし、やがて出産を迎える…。
感想
一話目から、かなりダークでヘヴィな内容ですな。
しかし、今回の主人公の松沢良子もそうですが、この漫画家(弘兼憲史先生)の描く女性は、純和風で美しく、妖艶でもあります。
30年以上も前の作品ですが、今見ても美しい。
流行り廃りのない美しさを描けるのはすごいと思います。
恒久的な美人を描かせたら、漫画では江口寿史先生、劇画ならこの弘兼憲史先生がピカイチですね。私の中では。
っと、画の感想ばかりでもアレなので、ストーリーのほうにも目を向けましょう。
この話、一番印象に残るセリフは、最後の最後、あの一言でしょうなぁ。
どうしてこんな叙情的な締め方が出来るのか。
原作の矢島正雄先生も素晴らしい!
散々ダークな気分で読んでたのに、最後にはちゃんと「じ~ん」とさせてくれます。
極力ネタバレはしない方向で行きたいと思っておりますので、具体的にどういう場面でどういうセリフだったかは、敢えて記しません。
あしからず…。